性腺外胚細胞腫瘍


2004.10 改訂版、医師用情報。NCIの許可を得て翻訳。  肺がん治療ネット

目次
一般情報
細胞分類
予後良好 非セミノーマ
セミノーマ
中程度の予後 非セミノーマ
セミノーマ
予後不良 非セミノーマ
セミノーマ

治療法選択肢概観
良性奇形腫
セミノーマ
非セミノーマ 縦隔非セミノーマ
後腹膜非セミノーマ


一般情報

性腺外胚細胞腫瘍はまれであり、全胚細胞腫瘍のうちのわずかな%を占めるにとどまります。しかし、これらの腫瘍は正確に診断することができず、真の発生率は予想より高いかもしれません。

細胞分類

性腺外胚細胞腫瘍には、良性 (奇形腫) や悪性があります。後者は、セミノーマとに分けられており、非セミノーマ胚細胞腫瘍には胎児性癌、悪性奇形腫、内胚葉洞腫瘍、絨毛癌および混合型胚細胞腫瘍があります。
性腺外胚細胞腫瘍は、女性よりも男性にはるかによく起こり [1] 、通常は若年成人に見られます。この腫瘍は進行の早い癌であり、どこにでも発生しうるのですが、典型的には、正中(縦隔、腹膜後,松果体)に発生します。注意深く精巣を調べ超音波検査によって、性腺原発のものを除外します。診断は困難なことがあり、明確に診断されていない上皮性悪性腫瘍患者,特に正中線上に腫瘤が認められる若年患者では,本疾患の可能性を考えるべきです。 [2] [3]
転移性非セミノーマ胚細胞腫瘍患者5,202人と転移性セミノーマ胚細胞腫瘍患者660人を対象とするレトロスペクティブ(さかのぼり)解析に基づいて、国際胚細胞腫瘍予後分類(IGCCC)が作成されました。 [4] いずれの患者も初回化学療法としてシスプラチンまたはカルボプラチンを含む治療を受けていました。以下に示す予後分類は、世界中で実施されたすべての主な臨床試験グループによって1997年初頭に合意されました。この予後分類は、性腺外胚細胞腫瘍患者の臨床試験成績を報告するのに用いられるべきです。

予後良好 非セミノーマ
  • 精巣/後腹膜原発         および
  • 肺以外の臓器への転移がない  および
  • 腫瘍マーカー値が良好:
    • AFP<1000ng/ml       および
    • hCG<5000iu/l(1000ng/ml)および
    • LDH<1.5×正常値の上限
非セミノーマの56%
5年無増悪生存率(PFS)89%
5年生存率92%
セミノーマ
  • 原発部位に関係ない         および
  • 肺以外の臓器への転移がない   および
  • AFPが正常値を示し、hCGとLDHはいずれの値であってもよい
セミノーマの90%
5年PFS82%
5年生存率86%
中程度予後 非セミノーマ
  • 原発巣が精巣/後腹膜にある    および
  • 肺以外の臓器への転移がない   および
  • 腫瘍マーカー中間値、つまり下記の条件のいずれかを満たす:
    • 1000≦AFP≦10,000ng/mL   または
    • 5000iu/l≦hCG≦50,000iu/l または
    • 1.5×N≦LDH≦10×N
非セミノーマの28%
5年PFS75%
5年生存率80%
セミノーマ
  • 原発部位に関係ない         および
  • 肺以外の臓器への転移がない  および
  • AFPが正常値を示し、hCGおよびLDHはいずれの値であってもよい
セミノーマの10%
5年PFS67%
5年生存率72%
予後不良 非セミノーマ
  • 原発巣が縦隔にある       または
  • 肺以外の臓器への転移がない または
  • 腫瘍マーカー値不良、つまり次に示す条件のいずれかを満たすこと:
    • AFP>10,000ng/ml       または
    • hCG>50,000iu/l(1000ng/ml)または
    • LDH>10×正常値の上限
非セミノーマの16%
5年PFS41%
5年生存率48%
セミノーマ 予後不良と分類される患者はいない。



参考文献

  1. Mayordomo JI, Paz-Ares L, Rivera F, et al.: Ovarian and extragonadal malignant germ-cell tumors in females: a single-institution experience with 43 patients. Ann Oncol 5 (3): 225-31, 1994.  [PUBMED Abstract]
  2. Greco FA, Vaughn WK, Hainsworth JD: Advanced poorly differentiated carcinoma of unknown primary site: recognition of a treatable syndrome. Ann Intern Med 104 (4): 547-53, 1986.  [PUBMED Abstract]
  3. Hainsworth JD, Greco FA: Extragonadal germ cell tumors and unrecognized germ cell tumors. Semin Oncol 19 (2): 119-27, 1992.  [PUBMED Abstract]
  4. International Germ Cell Consensus Classification: a prognostic factor-based staging system for metastatic germ cell cancers. International Germ Cell Cancer Collaborative Group. J Clin Oncol 15 (2): 594-603, 1997.  [PUBMED Abstract]

治療選択の概観

PDQには、各治療法について、「標準」または「臨床評価段階にある」と記載しているものがあるが、これは保険払い戻しを決定する材料にするものではない。

良性の奇形腫

良性奇形腫には、外科的切除のみが実施される。腫瘍は巨大であることが多く、手術はきわめて有効である。

セミノーマ

注: この章の本文中にある引用番号の後ろに、証拠水準を付記しているものがある。治療戦略の報告結果に関する証拠程度を読者が判断しやすくするために、PDQ編集委員会は、公式順位分類を採用している。(詳しい情報については、証拠水準に関するPDQ要約を参照のこと)
セミノーマの診断には、血清アルファフェトプロテイン(AFP)値が正常範囲にあり、かつほかの胚細胞腫瘍が存在しないことが必要である。このような患者における治療方針決定は困難な場合がある。
精巣セミノーマのように、本腫瘍の放射線感受性がきわめて高い。放射線療法による治療により、患者の約60〜80%は病気が消失する。 [1] 頭蓋内胚細胞腫(頭蓋内セミノーマの相方)に対して頭蓋脊髄放射線照射を実施すると、再発のない全生存率は5年時点で90〜95%である。 [2] [Level of evidence: 3iiiA]
非セミノーマ性精巣腫瘍に用いられる多剤療法による初回化学療法もきわめて効力がある。実際、限局性の比較的小さい腫瘍患者は通常、まずは放射線治療を受け、一方、きわめて巨大な腫瘍または非限局性の腫瘍患者は、エトポシドかシスプラチンを組み合わせた化学療法の多剤療法を受ける。
精巣セミノーマにみられるように、多くの患者では治療後に残存腫瘤が残る。残存腫瘤が3.0cmより小さい場合には、経過観察が妥当であるというのが一致した見解である。しかし、これよりも大きな残存腫瘤がある患者には、外科的切除を支持するグループもあれば、経過観察を支持するグループもある。 [3] [4]

参考文献

  1. Clamon GH: Management of primary mediastinal seminoma. Chest 83 (2): 263-7, 1983.  [PUBMED Abstract]
  2. Bamberg M, Kortmann RD, Calaminus G, et al.: Radiation therapy for intracranial germinoma: results of the German cooperative prospective trials MAKEI 83/86/89. J Clin Oncol 17 (8): 2585-92, 1999.  [PUBMED Abstract]
  3. Motzer R, Bosl G, Heelan R, et al.: Residual mass: an indication for further therapy in patients with advanced seminoma following systemic chemotherapy. J Clin Oncol 5 (7): 1064-70, 1987.  [PUBMED Abstract]
  4. Schultz SM, Einhorn LH, Conces DJ Jr, et al.: Management of postchemotherapy residual mass in patients with advanced seminoma: Indiana University experience. J Clin Oncol 7 (10): 1497-503, 1989.  [PUBMED Abstract]

非セミノーマ

注: この章の本文中にある引用番号の後ろに、証拠水準を付記しているものがある。治療戦略の報告結果に関する証拠程度を読者が判断しやすくするために、PDQ編集委員会は、公式順位分類を採用している。(詳しい情報については、証拠水準に関するPDQ要約を参照のこと)
非セミノーマ患者は、診断時に化学療法を実施すべきである。このような患者は、診断時に腫瘍体積がきわめて大きい傾向にあり、通常症状がある。腫瘍体積縮小を目的とした外科手術を最初に行うことが有用であることはまれである。高リスク患者は臨床試験が適していることが多い。「標準」療法は一般に、BEP(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)の4コースであると考えられる。 [1] [2]
以前に化学療法を受けなかった進行性播種性胚細胞腫瘍患者における、BEPの4コースとVIP(エトポシド+イホスファミド+シスプラチン)を比較した無作為研究では、全生存および治療中止まで期間(time-to-treatment failure)は同じであることがわかった。 [3] [4] [Level of evidence: 1iiA][証拠レベル:1iiA]この研究における304人の患者のうち66名は性腺外原発腫瘍を認め、この患者群における反応は、2多剤療法でほぼ同じであった。研究全般にみる血液毒性は、VIP多剤療法の方がBEP多剤療法に比して実質的に強かった。
化学療法後に残存腫瘤をみとめる患者が、化学療法後の全残存病変を切除する手術により長期無病生存を達成することがある。 [5] [証拠レベル:3iiiDi]一般に、標準化学療法後に再発する非セミノーマ性性腺外胚細胞腫瘍患者の予後は、再発精巣腫瘍に対して効果を認める自家骨髄移植を含む救助化学療法の多剤療法に対して奏効しにくいので不良である。 [6] [7] [8] したがって、そのような患者は新たな治療研究が必要とされる患者である。

縦隔非セミノーマ

縦隔非セミノーマには、ある独特な側面がある。縦隔の非セミノーマは、クラインフェルター症候群の患者では発生頻度が高く、治療と関連のない血液悪性腫瘍が後に発生する危険と因果関係がある。高リスクは、腫瘍体積、化学療法抵抗性、血液悪性腫瘍と別の非胚細胞性悪性腫瘍が発生する素因とある程度関係がある。ある無対照研究では、化学療法後、縦隔に残存腫瘤をみとめる患者が、血清腫瘍マーカーが高い場合でも完全切除後に長期無病生存を達成したことがある。 [5] [証拠レベル:3iiiDi]これらの良好な治療成績には、患者選択因子が何らかの役割を果たしている可能性がある。

後腹膜非セミノーマ

後腹膜の非セミノーマの予後は比較的良好であり、精巣原発腫瘍からのリンパ節転移のある状況とほぼ同じく、腫瘍体積と関係がある。

参考文献

  1. Williams SD, Birch R, Einhorn LH, et al.: Treatment of disseminated germ-cell tumors with cisplatin, bleomycin, and either vinblastine or etoposide. N Engl J Med 316 (23): 1435-40, 1987.  [PUBMED Abstract]
  2. Bosl GJ, Gluckman R, Geller NL, et al.: VAB-6: an effective chemotherapy regimen for patients with germ-cell tumors. J Clin Oncol 4 (10): 1493-9, 1986.  [PUBMED Abstract]
  3. Nichols CR, Catalano PJ, Crawford ED, et al.: Randomized comparison of cisplatin and etoposide and either bleomycin or ifosfamide in treatment of advanced disseminated germ cell tumors: an Eastern Cooperative Oncology Group, Southwest Oncology Group, and Cancer and Leukemia Group B Study. J Clin Oncol 16 (4): 1287-93, 1998.  [PUBMED Abstract]
  4. Hinton S, Catalano PJ, Einhorn LH, et al.: Cisplatin, etoposide and either bleomycin or ifosfamide in the treatment of disseminated germ cell tumors: final analysis of an intergroup trial. Cancer 97 (8): 1869-75, 2003.  [PUBMED Abstract]
  5. Schneider BP, Kesler KA, Brooks JA, et al.: Outcome of patients with residual germ cell or non-germ cell malignancy after resection of primary mediastinal nonseminomatous germ cell cancer. J Clin Oncol 22 (7): 1195-200, 2004.  [PUBMED Abstract]
  6. Saxman SB, Nichols CR, Einhorn LH: Salvage chemotherapy in patients with extragonadal nonseminomatous germ cell tumors: the Indiana University experience. J Clin Oncol 12 (7): 1390-3, 1994.  [PUBMED Abstract]
  7. Beyer J, Kramar A, Mandanas R, et al.: High-dose chemotherapy as salvage treatment in germ cell tumors: a multivariate analysis of prognostic variables. J Clin Oncol 14 (10): 2638-45, 1996.  [PUBMED Abstract]
  8. Loehrer PJ Sr, Gonin R, Nichols CR, et al.: Vinblastine plus ifosfamide plus cisplatin as initial salvage therapy in recurrent germ cell tumor. J Clin Oncol 16 (7): 2500-4, 1998.  [PUBMED Abstract]
  9. Nichols CR, Heerema NA, Palmer C, et al.: Klinefelter's syndrome associated with mediastinal germ cell neoplasms. J Clin Oncol 5 (8): 1290-4, 1987.  [PUBMED Abstract]
  10. Nichols CR, Roth BJ, Heerema N, et al.: Hematologic neoplasia associated with primary mediastinal germ-cell tumors. N Engl J Med 322 (20): 1425-9, 1990.  [PUBMED Abstract]
  11. Nichols CR, Saxman S, Williams SD, et al.: Primary mediastinal nonseminomatous germ cell tumors. A modern single institution experience. Cancer 65 (7): 1641-6, 1990.  [PUBMED Abstract]

The U.S. National Cancer Institute does not currently endorse any foreign translations of PDQR and no such endorsement should be inferred for the following translation.

2005.5 翻訳:秋葉直志