緩和ケアは「最期のケア」ではない
「緩和ケア」という言葉を聞くと、「もう治療ができない状態になったときのもの」と思う方も多いかもしれません。しかし現在の医療における緩和ケアの考え方は大きく変わっています。WHO(世界保健機関)の定義によれば、緩和ケアは診断された時点から治療と並行して行われるべきケアであり、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を和らげ、患者さんと家族のQOL(生活の質)を高めることを目的としています。
肺がんで起こりやすい身体症状と対処法
呼吸困難(息苦しさ)
肺がん患者さんに最も多く見られる症状の一つです。腫瘍による気道の圧迫、胸水の貯留、肺機能の低下などが原因となります。
- 医療用麻薬(低用量モルヒネ):呼吸困難を緩和する効果が認められている
- 酸素療法:血中酸素が低下している場合に有効
- 胸腔穿刺:胸水を排液することで息苦しさが改善する場合がある
- ファン(扇風機)の風を顔に当てる:簡便だが一定の効果がある非薬物療法
痛み(がん性疼痛)
WHO方式がん疼痛治療法に基づいた段階的な鎮痛薬の使用が推奨されています。
- 軽度の痛み:非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン)
- 中等度の痛み:弱オピオイド(コデイン・トラマドール)または低用量強オピオイド
- 強い痛み:強オピオイド(モルヒネ・オキシコドン・フェンタニル)
痛みは「我慢するもの」ではありません。適切な薬を使えば大多数の患者さんで痛みをコントロールできます。遠慮せず担当医や緩和ケアチームに伝えましょう。
倦怠感(だるさ)
がんそのものや治療の影響、貧血、栄養状態の低下などから生じる「がん関連倦怠感」は非常にありふれた症状です。原因の治療(貧血の是正など)に加え、適度な運動療法・睡眠の改善・エネルギーマネジメントが有効とされています。
食欲不振・体重減少
管理栄養士と連携した栄養サポート、食事の形態・量・タイミングの工夫が助けになります。食欲増進薬が処方されることもあります。
精神的・心理的サポート
がんと診断された際に不安・抑うつ・適応障害が生じることは珍しくありません。精神科医・心療内科医・がん専門の臨床心理士(がん相談員)によるサポートを積極的に活用しましょう。
- 緩和ケアチームへの相談
- がん相談支援センター(各がん診療連携拠点病院に設置)
- 患者会・サポートグループへの参加
家族・介護者へのサポート
患者さんだけでなく、支える家族もまた大きなストレスを抱えています。緩和ケアは家族のグリーフ(悲嘆)ケアや介護負担の軽減にも取り組んでいます。遠慮なく医療チームに相談することが大切です。
緩和ケアを受けるための相談窓口
- がん相談支援センター:全国のがん診療連携拠点病院に設置。無料で相談できます
- 緩和ケアチーム:病院内の多職種チームが痛みや症状の管理を担当
- 訪問看護・在宅ホスピス:自宅で療養したい場合に活用できる地域のサービス
- ホスピス・緩和ケア病棟:症状コントロールや終末期ケアに特化した病棟
緩和ケアは治療を諦めることではなく、治療と並走しながら「その人らしい生活」を支えるためのものです。早期から積極的に活用してください。